襲名披露「楽屋のれん」
市川右團次さんの制作の流れ
2016年5月末発表となった「三代目市川右團次」襲名、「二代目市川右近」襲名めでたく市川右團次となられるにあたり楽屋のれんを制作させて頂くこととなりました。 楽屋のれんを制作するまで何度も詳しくお話をお聞きし、「定紋」松皮菱に鬼蔦の大きさから「市川右團次」の字体に至るまでご意向に沿えるように、と詰めて参りました。
作家様へ依頼された「市川右團次」の字体の中から数点まで絞り込まれギリギリまで
悩まれましたが博多座から自宅まで送付頂き、制作の運びとなりました。
生地は、おめでたい「羽二重」。
通常「楽屋のれん」は「一越ちりめん」です。
これは、更に高級な「絹」生地希少価値ともいえる最高級の羽二重を入手することができましたので襲名披露の寿ぎに相応しい楽屋のれんに仕上げて参ります。
文字の「はね」・「とめ」の墨字も生かしつつ、正確に…。
通常の制作工程では「糊置き」のあと挽き粉をかけるのですが、それをすると特別な生地のため「滲み」が発生するのを鑑みこのままで「染め」の工程へ進んでいきます。
字体をキリリと仕上げるには40年以上日々染めていますが特に気が引き締まります。
通常の時間より数倍費やし、布を張る「伸子(しんし)」の竹の数も半端がありません。直ぐにシワがよりやすい性質なのでピンと張った状態に保つために
染めの工程中何度も「伸子」を追加し張っていきました。
今回、字体を際立たせるよう濃い色にとご希望であったため
染めの間の集中力はかなり必要になります。
一気に仕上げることが困難な程、集中しましたので珍しく数回休憩を挟み染めることになった程です。
今できる限りの技で市川右團次さんの楽屋のれんを心を込めて制作しました。
こちらが、三代目 市川右團次さんへお届けした楽屋のれんです。
満足できる仕上がりです。
ありがとうございました。